桜の森の満開の下-海賊版-TRPGシナリオ六回目
2005年4月24日 TRPGシナリオweb改革の勢いに乗ってこっちも更新です。このシナリオ掲載を始めてから2回もコンベンションでプレイしいろいろな要素が加わったのでこの中の登場人物たちが経験していないことも多分に含まれています。結末だけは変わらないから許してねみんな。さてぼちぼち始めますか。今回はシゴノセセイラ(PC3)のオープニングフェイズです。
『こういうのも何なんですが、先生は化粧をしたほうがいいと思いますよ。美人なんだから。』
こういったのは2週間前にこの江西病院にやってきた内科医下山大蔵である。36歳という年齢にしては言動が軽い。まるで高校生のような軽薄さである。セイラはこういう男は嫌いである、やはり何事も不言実行というのが美しい。
『化粧している時間があったら30分寝ていたい人なのよ私は』
『なるほど〜でも先生の睡眠不足は僕には何の関係もないですからねぇ。是非30分早く起きて私の目に栄養を与えていただきたいですねぇ、もしかしたらこの近眼も治るかもしれない』
『私にそんな義務はないわよっ!』
『いや、女性は美しくあるべきですよ。花は咲いてこそ花ですよ?』
『私は種かつぼみだとでもいうの?』
『いや〜例えるなら。3月のクリスマスツリーってなところですか?』
『どういう意味よ?』
『押入れの奥でホコリかぶってる。』
『怒るよっ!』
『怒ると美容に悪いですよ?』
『馬鹿馬鹿しい、そろそろ回診の時間だから行くわ』
『そろそろ改心の時間ですか?』
『いちいちうるさいわねっ』
下山の頭をひとつ叩くとセイラは回診に向かった、あの男と話しているとどうも調子が狂う。天敵というヤツだろう。あの男はもしかしたら悪魔ではあるまいか?天使の本性をもつセイラは時々そう思う。だったら好都合だ、悪魔であれば裁きの雷をくれてやればいいだけだ。こんなことを考えるということは自分は相当疲れているのだ。
『正直、うんざりだわね』
自分が一番嫌っているくちぐせが、また一つ出た。
セイラはスズキさんが入院している病室へ向かう、以前より落ち着いているとはいえ、まだ足の傷が癒えていない。幻覚を見るたび病院中を走り回るのだから無理もないだろう。
『赤い目の化け物が、すごい勢いで走ってきてヨシさんを・・・』
いつもの言葉が聞こえてくる、よほど強いショックを受けているのだろう。やはり魔物を見たのではないだろうか?
赤い目、熊のような体。どう考えても魔物である。しかしこんな小さな街を襲ったところでいったいどんな得があるというのか?もし縄張りを荒らしているということであればもっと早くから行動に出るはずだし、攻撃をする対象はこちらより自衛隊のほうだろう。考えても仕方がない、セイラは病室のドアを開ける。
スズキさんは見舞いに来ていた女性に必死に話している。奥さんだろうか?初老の婦人が涙をこらえながら賢明に話をあわせている。
『そうですねぇ、それは大変でしたねぇ。でも大丈夫ですよ。いま警察が調べていますから。』
『警察なんかあいつに殺されちまうよ、あんたも早く逃げなよ』
『あんた?・・・お父さん、私が誰かわからないんですか?』
『あんたが誰なのかはどうでもいい早く逃げなよ、命があぶねぇ!』
『・・・お父さん』
命を失うのはつらいことだが、大事な人間に自分を忘れられてしまうのもそれに匹敵するくらいにつらいことだろう。奥さんはついに顔を覆って泣きはじめてしまった。
なんとかしなければ・・・セイラは強くそう思った。
怪我を治すという守りの対応では間に合わない、こちらから攻めていかなければ。必要であれば「力」を使うことになるだろう。そのためにここにいられなくなったも仕方がない。『人間を守る』その想いが自分をここにとどめているのだから。小さく拳を握り締めたそのとき
『シゴノセ先生っ急患ですっ!』
看護士が自分を呼ぶ声が聞こえた。
『またか・・・』だが、ため息をついている時間はないセイラは声の方向へ走り出していた。(つづく)
『こういうのも何なんですが、先生は化粧をしたほうがいいと思いますよ。美人なんだから。』
こういったのは2週間前にこの江西病院にやってきた内科医下山大蔵である。36歳という年齢にしては言動が軽い。まるで高校生のような軽薄さである。セイラはこういう男は嫌いである、やはり何事も不言実行というのが美しい。
『化粧している時間があったら30分寝ていたい人なのよ私は』
『なるほど〜でも先生の睡眠不足は僕には何の関係もないですからねぇ。是非30分早く起きて私の目に栄養を与えていただきたいですねぇ、もしかしたらこの近眼も治るかもしれない』
『私にそんな義務はないわよっ!』
『いや、女性は美しくあるべきですよ。花は咲いてこそ花ですよ?』
『私は種かつぼみだとでもいうの?』
『いや〜例えるなら。3月のクリスマスツリーってなところですか?』
『どういう意味よ?』
『押入れの奥でホコリかぶってる。』
『怒るよっ!』
『怒ると美容に悪いですよ?』
『馬鹿馬鹿しい、そろそろ回診の時間だから行くわ』
『そろそろ改心の時間ですか?』
『いちいちうるさいわねっ』
下山の頭をひとつ叩くとセイラは回診に向かった、あの男と話しているとどうも調子が狂う。天敵というヤツだろう。あの男はもしかしたら悪魔ではあるまいか?天使の本性をもつセイラは時々そう思う。だったら好都合だ、悪魔であれば裁きの雷をくれてやればいいだけだ。こんなことを考えるということは自分は相当疲れているのだ。
『正直、うんざりだわね』
自分が一番嫌っているくちぐせが、また一つ出た。
セイラはスズキさんが入院している病室へ向かう、以前より落ち着いているとはいえ、まだ足の傷が癒えていない。幻覚を見るたび病院中を走り回るのだから無理もないだろう。
『赤い目の化け物が、すごい勢いで走ってきてヨシさんを・・・』
いつもの言葉が聞こえてくる、よほど強いショックを受けているのだろう。やはり魔物を見たのではないだろうか?
赤い目、熊のような体。どう考えても魔物である。しかしこんな小さな街を襲ったところでいったいどんな得があるというのか?もし縄張りを荒らしているということであればもっと早くから行動に出るはずだし、攻撃をする対象はこちらより自衛隊のほうだろう。考えても仕方がない、セイラは病室のドアを開ける。
スズキさんは見舞いに来ていた女性に必死に話している。奥さんだろうか?初老の婦人が涙をこらえながら賢明に話をあわせている。
『そうですねぇ、それは大変でしたねぇ。でも大丈夫ですよ。いま警察が調べていますから。』
『警察なんかあいつに殺されちまうよ、あんたも早く逃げなよ』
『あんた?・・・お父さん、私が誰かわからないんですか?』
『あんたが誰なのかはどうでもいい早く逃げなよ、命があぶねぇ!』
『・・・お父さん』
命を失うのはつらいことだが、大事な人間に自分を忘れられてしまうのもそれに匹敵するくらいにつらいことだろう。奥さんはついに顔を覆って泣きはじめてしまった。
なんとかしなければ・・・セイラは強くそう思った。
怪我を治すという守りの対応では間に合わない、こちらから攻めていかなければ。必要であれば「力」を使うことになるだろう。そのためにここにいられなくなったも仕方がない。『人間を守る』その想いが自分をここにとどめているのだから。小さく拳を握り締めたそのとき
『シゴノセ先生っ急患ですっ!』
看護士が自分を呼ぶ声が聞こえた。
『またか・・・』だが、ため息をついている時間はないセイラは声の方向へ走り出していた。(つづく)
桜の森の満開の下-海賊版-TRPGシナリオ五回目
2005年4月17日 TRPGシナリオ途中で放りだしたのか?と思われがちですがどっこい細々と続いている第五回です。今回はPC4(ネヤガワタイチ)のオープニングフェイズを書きます。PC3(シゴノセセイラ)は一番最後になります。なぜならその方が話しの流れがいいためです。それでは本編。
火曜日…
巌泉についたタイチは、まず街の中を散策してみることにした。半魔としての能力で自分と同じものを探してしまえば話は早いのだろうが、自分は魔物である前に新聞記者である。情報はコネと足で稼ぐのが常套手段だろう。それに魔力を使って相手を探すということは相手に自分の存在を伝えることにもなる。そんな愚行を犯すほど彼は若くはない。
新聞のスクラップと秋葉原で3万円でかったウィンドゥズ98のノートパソコンを抱えタイチは町役場へ向かった。殺された人々の年齢、説別、職業などを洗い出し関連性を見つける。そして『彼らがいなくなったことで誰が得をするのか?』を考える。殺人事件の捜査の基本はシャーロックホームズの時代からさほど変わっていない。もっとも理由なく人が殺せてしまう現代では通用しないことが多いアプローチではあるが。
『理由泣く人が殺せる…人間てのは魔物よりおっかねぇかもしれねぇな』
そう考えることが時々ある。
バラバラと書類をめくっていると殺された6人のプロフィールが明らかになった。
西荻ユウゾウ/47男/代田製薬盛岡営業所勤務
川久保ヨシカツ/35男/三島材木現場監督
小城屋ケンタロウ/61男/作家
君塚サトシ/25男/巌泉小学校教諭
三上タケシ/78男/無職
蜂谷ハジメ/41男/陶芸家
『しかし、まぁ…見事なまでにバラバラだな』
関連事項といえば全員が成人男子であることぐらいだ、あまりにも範囲が広すぎる、ここから先は彼らを実際に知る人物から話を聞くしかなさそうだ。どうせ警察も同じことをやっているだろう。タイチは携帯を取り出し電話をかけた
『おーネヤガワくんか、この間の池袋の一件は世話になったな』
警視庁資料(死霊)科のフジオカ警部である。資料科は特殊な組織で魔物による犯行を独自に調査、時によってはその駆除を行う。そういう特別な部署である。タイチが個人的に協力したことも一度や二度ではない。
『フジオカさん、岩手の猟奇殺人の件ってなにか動いてます?』
『きなくさいとは思ってるんだが、あれは岩手県警の管轄だ。』
『じゃぁ、特に有益な情報は無しですか?』
『無しだな、…今のところは』
『今のところは…ですか?』
『必要があれば俺達が動く、できればやりたくないがね。週末ゴルフなんだよ。最近アイアンの調子がよくてね』
『…仕事しろよ、税金泥棒め。』
『まぁ、ゴルフは本当の理由じゃない。あの街に自衛隊がいるだろ?じつは、あそこが何をしてるかというのは最重要機密とかで俺達も把握してないんだ。』
『最重要機密?核でも持ってるんですかね?』
『核はさすがにないだろうが、もしかすると「俺達みたいなの」には一番ありがたくない奴等のねぐらかも知れんと言う事さ。』
『対魔特殊部隊、ですか?』
『もしそうなら、話は厄介だな。ま、がんばれよ。』
そういって電話は切れた。
『自衛隊か…厄介な話だ。自衛ってんだからこんな山奥じゃなくて海の側にでも居ろってんだ。お前らが戦わなきゃいけないのは海外からの侵略者だろうが。国内は警察と正義の味方に任せときゃいいんだよ』
そう悪態をついていると後ろから不意に声が聞こえた
『あなたもそうお考えですか、この街に自衛隊は不要です。私達が必ず追い出しますから』
振り返ると、60代くらいの紳士。いや紳士というよりは畑のおじさんといった雰囲気の男が真剣なまなざしで立っていた。タイチはこの男を写真で見たことがある。この街の町長北園祐一郎だ。もう15年以上もこの街の長を務め町民からは大きな信頼を得ている。街の名物になっている桜の街道を作ったのも彼だ。最近は自衛隊の立ち退き運動の中心になっているということらしい。それはそうだろう基地も原発も必要かもしれないが「おらが村」にそれがあれば「やっぱりいらない」というのが本音というものだ。
新聞記者として町長といろいろ話を進めると、自衛隊はかなり強引な方法でここに基地を作ったらしく。町民からはまったくいい感情を抱かれていないということがわかった。殺人事件に関してもいくつか質問をしてみたが、有益な回答は得られなかった。
その代わり街一番の物知り喫茶店の「ワタナベマリコ」という人物を紹介してもらった。情報の収集源が確保できただけでもよしとすべきだろう。
『ささやかながら守り続けてきた幸せな生活を、あいつらは踏みにじったんですよ』
町長の懸命な訴えが妙に心に残った。時間ができたら記事にしてみるのも良いかな?そうタイチは思った。
役場を出ると自衛隊の大きなトラックが何台も何台もそれほどを大きくない商店街を走ってきた。黒い煙を上げて…きれいなものを汚しにきた機械の魔物。タイチにはそんな風に見えた。(つづく)
火曜日…
巌泉についたタイチは、まず街の中を散策してみることにした。半魔としての能力で自分と同じものを探してしまえば話は早いのだろうが、自分は魔物である前に新聞記者である。情報はコネと足で稼ぐのが常套手段だろう。それに魔力を使って相手を探すということは相手に自分の存在を伝えることにもなる。そんな愚行を犯すほど彼は若くはない。
新聞のスクラップと秋葉原で3万円でかったウィンドゥズ98のノートパソコンを抱えタイチは町役場へ向かった。殺された人々の年齢、説別、職業などを洗い出し関連性を見つける。そして『彼らがいなくなったことで誰が得をするのか?』を考える。殺人事件の捜査の基本はシャーロックホームズの時代からさほど変わっていない。もっとも理由なく人が殺せてしまう現代では通用しないことが多いアプローチではあるが。
『理由泣く人が殺せる…人間てのは魔物よりおっかねぇかもしれねぇな』
そう考えることが時々ある。
バラバラと書類をめくっていると殺された6人のプロフィールが明らかになった。
西荻ユウゾウ/47男/代田製薬盛岡営業所勤務
川久保ヨシカツ/35男/三島材木現場監督
小城屋ケンタロウ/61男/作家
君塚サトシ/25男/巌泉小学校教諭
三上タケシ/78男/無職
蜂谷ハジメ/41男/陶芸家
『しかし、まぁ…見事なまでにバラバラだな』
関連事項といえば全員が成人男子であることぐらいだ、あまりにも範囲が広すぎる、ここから先は彼らを実際に知る人物から話を聞くしかなさそうだ。どうせ警察も同じことをやっているだろう。タイチは携帯を取り出し電話をかけた
『おーネヤガワくんか、この間の池袋の一件は世話になったな』
警視庁資料(死霊)科のフジオカ警部である。資料科は特殊な組織で魔物による犯行を独自に調査、時によってはその駆除を行う。そういう特別な部署である。タイチが個人的に協力したことも一度や二度ではない。
『フジオカさん、岩手の猟奇殺人の件ってなにか動いてます?』
『きなくさいとは思ってるんだが、あれは岩手県警の管轄だ。』
『じゃぁ、特に有益な情報は無しですか?』
『無しだな、…今のところは』
『今のところは…ですか?』
『必要があれば俺達が動く、できればやりたくないがね。週末ゴルフなんだよ。最近アイアンの調子がよくてね』
『…仕事しろよ、税金泥棒め。』
『まぁ、ゴルフは本当の理由じゃない。あの街に自衛隊がいるだろ?じつは、あそこが何をしてるかというのは最重要機密とかで俺達も把握してないんだ。』
『最重要機密?核でも持ってるんですかね?』
『核はさすがにないだろうが、もしかすると「俺達みたいなの」には一番ありがたくない奴等のねぐらかも知れんと言う事さ。』
『対魔特殊部隊、ですか?』
『もしそうなら、話は厄介だな。ま、がんばれよ。』
そういって電話は切れた。
『自衛隊か…厄介な話だ。自衛ってんだからこんな山奥じゃなくて海の側にでも居ろってんだ。お前らが戦わなきゃいけないのは海外からの侵略者だろうが。国内は警察と正義の味方に任せときゃいいんだよ』
そう悪態をついていると後ろから不意に声が聞こえた
『あなたもそうお考えですか、この街に自衛隊は不要です。私達が必ず追い出しますから』
振り返ると、60代くらいの紳士。いや紳士というよりは畑のおじさんといった雰囲気の男が真剣なまなざしで立っていた。タイチはこの男を写真で見たことがある。この街の町長北園祐一郎だ。もう15年以上もこの街の長を務め町民からは大きな信頼を得ている。街の名物になっている桜の街道を作ったのも彼だ。最近は自衛隊の立ち退き運動の中心になっているということらしい。それはそうだろう基地も原発も必要かもしれないが「おらが村」にそれがあれば「やっぱりいらない」というのが本音というものだ。
新聞記者として町長といろいろ話を進めると、自衛隊はかなり強引な方法でここに基地を作ったらしく。町民からはまったくいい感情を抱かれていないということがわかった。殺人事件に関してもいくつか質問をしてみたが、有益な回答は得られなかった。
その代わり街一番の物知り喫茶店の「ワタナベマリコ」という人物を紹介してもらった。情報の収集源が確保できただけでもよしとすべきだろう。
『ささやかながら守り続けてきた幸せな生活を、あいつらは踏みにじったんですよ』
町長の懸命な訴えが妙に心に残った。時間ができたら記事にしてみるのも良いかな?そうタイチは思った。
役場を出ると自衛隊の大きなトラックが何台も何台もそれほどを大きくない商店街を走ってきた。黒い煙を上げて…きれいなものを汚しにきた機械の魔物。タイチにはそんな風に見えた。(つづく)
-桜の森の満開の下-海賊版-TRPGシナリオ四回目
2005年4月14日 TRPGシナリオ一度はじめてしまったからには決着をつけなければならないため第四回です。今回はPC2(ヒムロアキト)のオープニングフェイズを。
日曜日・・・厳しい練習のあとアキト達、野球部員はカラオケに来ていた・
この街で唯一といっていい娯楽施設である、他の部屋もいっぱいなため、6人部屋に11人が押し込められている。
『俺にもマイクよこせっつってんだろう!』
アキトは叫んだ、キャプテンの北園浩一がもう7曲連続で歌いっぱなしなのである。しかもうまくない、ドラえもんのジャイアンを彷彿させる下手くそな歌だ。
『美咲ちゃんはうまいのに先輩は下手っすよね、同じ兄妹でこうも違うもんすかねぇ?』・・・同感である、去年アメリカ留学から帰ってきた彼の妹の美咲は芸能プロダクションから誘いが来るほどの才能の持ち主だ、もっとも本人は
『聞いてもらうのはうれしいけど人に見られるのはちょっと・・・』
という感じで一向に応じる気配がない、目立ちたがり屋の浩一とはその辺も対照的だ。
ピアノソロのイントロが流れた、森山直太郎の「さくら独唱」、B’zとスピッツしか歌わない浩一にしては珍しい選曲だ。浩一がチラリとマネージャーの木下玲子を見た、玲子が意味ありげな微笑みを返す。お互いにしかわからない感情がそこに流れている。
『こいつらなんかあったな・・・』アキトは思った
恋愛か・・・アキトはうらやましく思う、玲子とそういう関係になりたいということではない、自分が人間の女の子にそういう感情を抱いたとき、その気持ちをそのまま素直に伝えられない事情がアキトにはある。『彼氏が化け物なんてしゃれになんねぇ』そう思っている。悔しいがこのことはあきらめるしかないな・・・
その考えが表情に出ているのだろう後輩達がざわついた
『やっぱヒムロ先輩も木下さん狙ってたんすか?』後輩の一平が屈託なくたずねる。
『バカ、俺の理想はもっとたけぇよ』アキトは笑って答えた、無理をしている。というのが自分にもわかった。
コツコツとドアをたたく音が聞こえる、小さな窓から女の子がのぞいている、美咲だ。
『あれ?どうしたの』アキトが立ち上がってドアを少しあける。
『お菓子を作ったから兄ちゃんに持って行こうと思って…部屋にいないからもしかしたらここかなって、来てみた。』
桜の花びらの形のクッキーだ、東京のデパ地下とやらでみたものとそっくりのそれがいくつも箱の中にあった。のんびりした雰囲気にそぐわずこの娘は手先が器用だな、と思った。そういえばこの間壊れたアキトの携帯をいろいろいじって直してしまったのも彼女だ。
『とりあえず入んなよ、どうせ店長のバンさん人数数えてねぇから』
田舎のカラオケ屋の会計はどんぶり勘定だ。
『???なんの歌ですか???』入るなり美咲が顔をしかめる。
『さくら独唱。森山直太郎、知らない?』
『あーラジオでこの間やってたアレかー』
『そっか一昨年の歌だっけな、美咲ちゃんはアメリカにいたね、こういうのは嫌い?』
『結構いい歌だと思うけど…兄ちゃんが歌うとどの歌もマリリン・マンソンに聞こえるね』美咲は笑った。アキトにはマリリン・なんとかがよくわらからない、マトリックスに歌を提供してたあの変なヤツか?という程度だ、どのみち褒めている訳ではなさそうだ。
『おう!美咲お前もなんか歌え!長渕歌え!長淵!!』
浩一はご機嫌だった、北園兄妹は仲が良い。それもそうだろう12年も会っていなかったのだから。
『ぇーいいよ、この歌で』美咲は【歌いなおし】ボタンを押した
僕らはきっと待ってる、君とまた会える日々を〜
美咲は歌いだした、カラオケボックスが品のいいコンサート会場のような雰囲気に包まれた、部屋にいるだけもが驚いている、歌がうまいのは知っているがこれほどとは、そういう感じだ。
アキトの驚きはそれとは少し違う、まるで聞いたこともない、名前も知らなかったような曲をこうまでうまく歌えるものなのだろうか?普通の人間ではまずありえないだろう、彼女はこの歌を一度も聴き通した事がないのだ。それが天才といってしまえばそれまでだが。
『楽しいよな。』浩一がアキトの横に座った。
『お前はな』少しいやみっぽく応じる。
『そういうことじゃなくてさ、美咲がいて、あいつがいてみんながいて、なんかこういうのは良いよな』浩一が少し真剣な顔で言う。
意外と寂しがりやな人間なのだ、自分が一人でないことがうれしい
それはアキトも同じだった。
『そうだな、これからもずっとそうさ。』そう答えた。
『…そうだと、良いんだけどな。なぁアキト、俺になんかあったら美咲を頼むぜ。』
唐突に何を言い出すのかと思った、まるでもうすぐ自分がいなくなるような口ぶりではないか。
『なにかあるのか?』
『いや言ってみたかっただけ』そういって浩一はいたずらっぽくわかった、アキトはこいつのこういう部分が気に入っている。
『それより夏の大会だ、まだ先だけど。勝てるといいな』
『良いなじゃねぇよ、勝つの、俺達に負けはにあわねぇ』
そういって二人は笑った。
…次の日、浩一がいなくなった…(つづく)
日曜日・・・厳しい練習のあとアキト達、野球部員はカラオケに来ていた・
この街で唯一といっていい娯楽施設である、他の部屋もいっぱいなため、6人部屋に11人が押し込められている。
『俺にもマイクよこせっつってんだろう!』
アキトは叫んだ、キャプテンの北園浩一がもう7曲連続で歌いっぱなしなのである。しかもうまくない、ドラえもんのジャイアンを彷彿させる下手くそな歌だ。
『美咲ちゃんはうまいのに先輩は下手っすよね、同じ兄妹でこうも違うもんすかねぇ?』・・・同感である、去年アメリカ留学から帰ってきた彼の妹の美咲は芸能プロダクションから誘いが来るほどの才能の持ち主だ、もっとも本人は
『聞いてもらうのはうれしいけど人に見られるのはちょっと・・・』
という感じで一向に応じる気配がない、目立ちたがり屋の浩一とはその辺も対照的だ。
ピアノソロのイントロが流れた、森山直太郎の「さくら独唱」、B’zとスピッツしか歌わない浩一にしては珍しい選曲だ。浩一がチラリとマネージャーの木下玲子を見た、玲子が意味ありげな微笑みを返す。お互いにしかわからない感情がそこに流れている。
『こいつらなんかあったな・・・』アキトは思った
恋愛か・・・アキトはうらやましく思う、玲子とそういう関係になりたいということではない、自分が人間の女の子にそういう感情を抱いたとき、その気持ちをそのまま素直に伝えられない事情がアキトにはある。『彼氏が化け物なんてしゃれになんねぇ』そう思っている。悔しいがこのことはあきらめるしかないな・・・
その考えが表情に出ているのだろう後輩達がざわついた
『やっぱヒムロ先輩も木下さん狙ってたんすか?』後輩の一平が屈託なくたずねる。
『バカ、俺の理想はもっとたけぇよ』アキトは笑って答えた、無理をしている。というのが自分にもわかった。
コツコツとドアをたたく音が聞こえる、小さな窓から女の子がのぞいている、美咲だ。
『あれ?どうしたの』アキトが立ち上がってドアを少しあける。
『お菓子を作ったから兄ちゃんに持って行こうと思って…部屋にいないからもしかしたらここかなって、来てみた。』
桜の花びらの形のクッキーだ、東京のデパ地下とやらでみたものとそっくりのそれがいくつも箱の中にあった。のんびりした雰囲気にそぐわずこの娘は手先が器用だな、と思った。そういえばこの間壊れたアキトの携帯をいろいろいじって直してしまったのも彼女だ。
『とりあえず入んなよ、どうせ店長のバンさん人数数えてねぇから』
田舎のカラオケ屋の会計はどんぶり勘定だ。
『???なんの歌ですか???』入るなり美咲が顔をしかめる。
『さくら独唱。森山直太郎、知らない?』
『あーラジオでこの間やってたアレかー』
『そっか一昨年の歌だっけな、美咲ちゃんはアメリカにいたね、こういうのは嫌い?』
『結構いい歌だと思うけど…兄ちゃんが歌うとどの歌もマリリン・マンソンに聞こえるね』美咲は笑った。アキトにはマリリン・なんとかがよくわらからない、マトリックスに歌を提供してたあの変なヤツか?という程度だ、どのみち褒めている訳ではなさそうだ。
『おう!美咲お前もなんか歌え!長渕歌え!長淵!!』
浩一はご機嫌だった、北園兄妹は仲が良い。それもそうだろう12年も会っていなかったのだから。
『ぇーいいよ、この歌で』美咲は【歌いなおし】ボタンを押した
僕らはきっと待ってる、君とまた会える日々を〜
美咲は歌いだした、カラオケボックスが品のいいコンサート会場のような雰囲気に包まれた、部屋にいるだけもが驚いている、歌がうまいのは知っているがこれほどとは、そういう感じだ。
アキトの驚きはそれとは少し違う、まるで聞いたこともない、名前も知らなかったような曲をこうまでうまく歌えるものなのだろうか?普通の人間ではまずありえないだろう、彼女はこの歌を一度も聴き通した事がないのだ。それが天才といってしまえばそれまでだが。
『楽しいよな。』浩一がアキトの横に座った。
『お前はな』少しいやみっぽく応じる。
『そういうことじゃなくてさ、美咲がいて、あいつがいてみんながいて、なんかこういうのは良いよな』浩一が少し真剣な顔で言う。
意外と寂しがりやな人間なのだ、自分が一人でないことがうれしい
それはアキトも同じだった。
『そうだな、これからもずっとそうさ。』そう答えた。
『…そうだと、良いんだけどな。なぁアキト、俺になんかあったら美咲を頼むぜ。』
唐突に何を言い出すのかと思った、まるでもうすぐ自分がいなくなるような口ぶりではないか。
『なにかあるのか?』
『いや言ってみたかっただけ』そういって浩一はいたずらっぽくわかった、アキトはこいつのこういう部分が気に入っている。
『それより夏の大会だ、まだ先だけど。勝てるといいな』
『良いなじゃねぇよ、勝つの、俺達に負けはにあわねぇ』
そういって二人は笑った。
…次の日、浩一がいなくなった…(つづく)
桜の森の満開の下-海賊版-TRPGシナリオ三回目
2005年4月10日 TRPGシナリオ遅れ遅れですが第三回です。今回はPC1のオープニングフェイズを。
ヤツキョウスケ(PC1)はご機嫌だった。盛岡まで出てお気に入りのロックバンド『エゴイスト』のライブを見てきたのである。過激なパフォーマンスと破滅的な楽曲で知る人ぞ知る人気グループである。自意識過剰な歌詞を「恥ずかしい」といって否定する者も多いがキョウスケは彼らのそんな身勝手な歌が好きだった。
CDウォークマンに会場で買った限定アルバムを入れ聞いていると、電車からみる田舎の景色も刺激の多い都会に見えてくるから不思議だ。
『うるせぇっていってんだろぉ!!』
エゴイストの演奏をかき消すように男の声が聞こえてきた。声の方に顔を向けると60を少し過ぎたぐらいだろうか?酔っ払った男が女の子に絡んでいる。知らないフリを決め込もうとすると女の子と目が合った『助けて・・・』
そういっているように見えた
ヘッドフォンからゴルゴことボーカルの土井の声がする
キョウスケは立ち上がったそして小声でこうつぶやく
『やめてやれよ・・・』だが相手は聞く耳を持たない、こちらを振り向きもしない。
いやな感覚がよみがえってくる。自分の中の人にあらざるものが目覚めるときのあの感覚だ。それがもし目覚めてしまったらこの男は間違いなく二度と立ち上がることはないだろう。だからいさかいや喧嘩はごめんなんだ。そんなことを考えてながら、一方でこの娘を助けたいどうしても助けなければ。そう思っている自分もいる。
拳を固めた。全力を出さないように少し加減しながら左腕を振りぬく。左フックは見事に相手のわき腹を捕らえ、男は口元を押さえながらトイレへ駆け込んでいった。
『なんで俺はこんなことをしたんだ?別段美人ってほどの女でもないし、知り合いでもない。ライブのせいか?そうだな、今日は特別なんだ。』キョウスケは自分にそう言い聞かせた。
『大丈夫だあの力はまだ抑えていられる。』
気がつくと女の子がこっちを心配そうに見ていた。
『あ、あの。ごめんなさい』
『いや、別にあんたに何もされてないし。ていうか、そういう時は「ありがとう」じゃねぇ?』
『そういえば、そうだね。おかしいね』
そういって彼女は笑った。笑った顔は以外にかわいいと思えた。
話をしていくうちに同じ巌泉高校に通う生徒だということがわかった。しばらく話をした。話題の中心は音楽だったがエゴイストファンだということは黙っておいた。そうしたほうが無難なバンドなのだ。駅で彼女と別れるとき。キョウスケは妙な感覚にとらわれた何か懐かしい感じだ。それが何なのかはよくわからない。よくわからないが女の子と久しぶりにたくさんしゃべれたのでなんとなく満足だった。そしてそんな自分に少し安心をして、家路に着いた。
キョウスケは気づいていなかったが。彼女が去ったあとにいくつかの桜の花びらが舞っていた。
続く。
ヤツキョウスケ(PC1)はご機嫌だった。盛岡まで出てお気に入りのロックバンド『エゴイスト』のライブを見てきたのである。過激なパフォーマンスと破滅的な楽曲で知る人ぞ知る人気グループである。自意識過剰な歌詞を「恥ずかしい」といって否定する者も多いがキョウスケは彼らのそんな身勝手な歌が好きだった。
CDウォークマンに会場で買った限定アルバムを入れ聞いていると、電車からみる田舎の景色も刺激の多い都会に見えてくるから不思議だ。
『うるせぇっていってんだろぉ!!』
エゴイストの演奏をかき消すように男の声が聞こえてきた。声の方に顔を向けると60を少し過ぎたぐらいだろうか?酔っ払った男が女の子に絡んでいる。知らないフリを決め込もうとすると女の子と目が合った『助けて・・・』
そういっているように見えた
ヘッドフォンからゴルゴことボーカルの土井の声がする
キョウスケは立ち上がったそして小声でこうつぶやく
『やめてやれよ・・・』だが相手は聞く耳を持たない、こちらを振り向きもしない。
いやな感覚がよみがえってくる。自分の中の人にあらざるものが目覚めるときのあの感覚だ。それがもし目覚めてしまったらこの男は間違いなく二度と立ち上がることはないだろう。だからいさかいや喧嘩はごめんなんだ。そんなことを考えてながら、一方でこの娘を助けたいどうしても助けなければ。そう思っている自分もいる。
拳を固めた。全力を出さないように少し加減しながら左腕を振りぬく。左フックは見事に相手のわき腹を捕らえ、男は口元を押さえながらトイレへ駆け込んでいった。
『なんで俺はこんなことをしたんだ?別段美人ってほどの女でもないし、知り合いでもない。ライブのせいか?そうだな、今日は特別なんだ。』キョウスケは自分にそう言い聞かせた。
『大丈夫だあの力はまだ抑えていられる。』
気がつくと女の子がこっちを心配そうに見ていた。
『あ、あの。ごめんなさい』
『いや、別にあんたに何もされてないし。ていうか、そういう時は「ありがとう」じゃねぇ?』
『そういえば、そうだね。おかしいね』
そういって彼女は笑った。笑った顔は以外にかわいいと思えた。
話をしていくうちに同じ巌泉高校に通う生徒だということがわかった。しばらく話をした。話題の中心は音楽だったがエゴイストファンだということは黙っておいた。そうしたほうが無難なバンドなのだ。駅で彼女と別れるとき。キョウスケは妙な感覚にとらわれた何か懐かしい感じだ。それが何なのかはよくわからない。よくわからないが女の子と久しぶりにたくさんしゃべれたのでなんとなく満足だった。そしてそんな自分に少し安心をして、家路に着いた。
キョウスケは気づいていなかったが。彼女が去ったあとにいくつかの桜の花びらが舞っていた。
続く。
桜の森の満開の下-海賊版-TRPGシナリオ 二回目
2005年4月8日 TRPGシナリオそんなこんなで遅れがちですが、第二回目を掲載します。今回はハンドアウトの詳細その二です。仕事もだんだん落ち着いてきたので、もう少し更新頻度上がるかなー。
ヒムロアキトは、県立巌泉高校野球部のエースである。子供のころから何よりも負けるのが嫌いだった。そしてこの街が大好きである。後二年したらこの街を出て東京の大学へ通うつもりでいる、そのときには絶対に東京者(トウキョウモン)になんか負けてやるつもりはない。そんな典型的な『おらが村大好き』な少年である。確かにこの街には派手な娯楽はない、だが竜泉洞という洞窟があり、温泉も出る、竜泉洞から駅前まではそれは見事な桜の街道が走っており。毎年それを東京者が拝みに来るのだ。あいつらが大枚はたいて見物に来るものがいつもそばにある。なかなか愉快なことではないか。そう思っている。
だが、そんな『おらが村』に異変が起こり始めている。名物の桜はことしはつぼみのままで春を終わろうとしている。殺人事件が頻発しているといういやなうわさも耳にする。そして信頼するキャプテンの浩一がもう3日間も学校に来ていない、顔をあわせない日はないくらいの相手とこれほど長く会わないというのはなんだか落ち着かない・・・いやな胸騒ぎがする、夜中になると悪寒がして目が覚めることが多い。病気なわけではない、自分の中のもう一人の自分の力が目覚めようとしている、できれば、楽しい学生でいたいのに。そうさせない何かが迫っている。それが気のせいであればいいのに・・・
最近仕事が忙しい。この不景気に結構なことかもしれないが。シゴノセセイラの場合あまり商売大繁盛では素直に喜べない事情がある。彼女は外科医なのである。葬儀屋と医者はあまり繁盛しないほうが世の中が平和だというが一般的なものの見方だろう。
けが人が多い、林業が盛んな街だから擦り傷、切り傷が多いのは、納得できるが、最近の患者はそうではない。あきらかに殺意を持った傷を負った人々が病院に担ぎ込まれてくる。
『・・・正直うんざりだわね。』
これが最近の口癖になってしまっている、常にしかめっ面をしているはずだ。これではいけない精神的にも、肉体(美容)にも。まぁそうはいっても彼女には老いなどというものは訪れないのだが。
『おらぁ、見たんだ!でかい熊みてぇな化け物が。ヨシさんを真っ二つにしたんだよぉ・・・本当だオラぁはうそはいってねぇ。』今朝も患者のスズキさんがわめいている、5日目となればなれたものだみんな聞こえているくせに聞こえないフリをする。
『いやな夢でも見たんですよ。』看護婦が彼を落ち着かせるように笑顔で近づき、安定剤を処方することでこの朝の儀式は幕となる。それを見てセイラはつぶやくのだ
『そうね、夢じゃないわね・・・これか夢だったらどんなにいいかしら・・・』
ヒムロアキトは、県立巌泉高校野球部のエースである。子供のころから何よりも負けるのが嫌いだった。そしてこの街が大好きである。後二年したらこの街を出て東京の大学へ通うつもりでいる、そのときには絶対に東京者(トウキョウモン)になんか負けてやるつもりはない。そんな典型的な『おらが村大好き』な少年である。確かにこの街には派手な娯楽はない、だが竜泉洞という洞窟があり、温泉も出る、竜泉洞から駅前まではそれは見事な桜の街道が走っており。毎年それを東京者が拝みに来るのだ。あいつらが大枚はたいて見物に来るものがいつもそばにある。なかなか愉快なことではないか。そう思っている。
だが、そんな『おらが村』に異変が起こり始めている。名物の桜はことしはつぼみのままで春を終わろうとしている。殺人事件が頻発しているといういやなうわさも耳にする。そして信頼するキャプテンの浩一がもう3日間も学校に来ていない、顔をあわせない日はないくらいの相手とこれほど長く会わないというのはなんだか落ち着かない・・・いやな胸騒ぎがする、夜中になると悪寒がして目が覚めることが多い。病気なわけではない、自分の中のもう一人の自分の力が目覚めようとしている、できれば、楽しい学生でいたいのに。そうさせない何かが迫っている。それが気のせいであればいいのに・・・
最近仕事が忙しい。この不景気に結構なことかもしれないが。シゴノセセイラの場合あまり商売大繁盛では素直に喜べない事情がある。彼女は外科医なのである。葬儀屋と医者はあまり繁盛しないほうが世の中が平和だというが一般的なものの見方だろう。
けが人が多い、林業が盛んな街だから擦り傷、切り傷が多いのは、納得できるが、最近の患者はそうではない。あきらかに殺意を持った傷を負った人々が病院に担ぎ込まれてくる。
『・・・正直うんざりだわね。』
これが最近の口癖になってしまっている、常にしかめっ面をしているはずだ。これではいけない精神的にも、肉体(美容)にも。まぁそうはいっても彼女には老いなどというものは訪れないのだが。
『おらぁ、見たんだ!でかい熊みてぇな化け物が。ヨシさんを真っ二つにしたんだよぉ・・・本当だオラぁはうそはいってねぇ。』今朝も患者のスズキさんがわめいている、5日目となればなれたものだみんな聞こえているくせに聞こえないフリをする。
『いやな夢でも見たんですよ。』看護婦が彼を落ち着かせるように笑顔で近づき、安定剤を処方することでこの朝の儀式は幕となる。それを見てセイラはつぶやくのだ
『そうね、夢じゃないわね・・・これか夢だったらどんなにいいかしら・・・』
桜の森の満開の下-海賊版-TRPGシナリオ
2005年4月4日 TRPGシナリオ遅くなりましたが、先月のコンベンションで行った
BBNT(ビーストバインド・ニューテスタメント)用のシナリオ+プレイリポです。非常に長いので何回かに分けてお送りします。
岩手県巖泉町、森に囲まれた自然の美しい街だ。観光に来るにはいいのかも知れないけど。俺には退屈な街。そういう風に16歳の高校生ヤツ・キョウスケはそう思っている。
『どんなところでもすめば都まずは彼女でも作ってみたら?』
とは友人のオカムラの意見だが、『垢抜けない泥つき大根みたいなのを彼女にするなんて』
東京から親の都合でこっちに引っ越してきたばかりのキョウスケはそう考えていた。
東京上野広小路、岩手新報東京支社では今日もマキハラ編集長の怒りが静かに燃えていた・
『ネヤガワー!!確かにテキサスのカウボーイを取材して来いといったがなんだこれは?「テキサスブロンコの魂は不滅!永遠のスピニングトーホールド」これはお前プロレスラーのレポートじゃねか!!』
『編集長、ファンク兄弟はすばらしいカウボーイですよ。そもそも彼らの成功には父ドリーファンクシニアの血と汗と努力がですねぇ…』
ネヤガワは大のプロレス・格闘技マニアである新聞記者になったのも「タダでプロレスが見られる」そう考えたからだった、彼が生きていくためには金などは必要ない。食べるために働くなんていうことは彼には必要ない、ただ、自分に与えられた膨大な時間を楽しく過ごすためにそれが必要なだけだ。
『まったくお前は、変な取材しかしてこないんだから。もういい、お前に海外を任せたのは俺の失敗だ、今週はここにいって来い。岩手の巖泉だ、妙な連続殺人事件が起きてる、変わり者のお前にはちょうどいいだろう』そういって編集長は一枚の写真を見せた、人間の体がなにか得体の知れないものの力で真っ二つに切断されている、グロテスクな写真である。とても人間業とは思えない残忍な殺し方だ。
『なるほど、こいっぁ俺向きですよ…』
タイチは不適に微笑んだ、こう思っている「こりゃぁ、人間の仕業じゃねぇ」
ここまでがハンドアウトの前半です。
後半あと2キャラ分は次々回にでも
だいぶ長編(5〜6回?)になりそうなので、まとめて見たい方はテーマのTRPGシナリオを選んでいくといいかも)
BBNT(ビーストバインド・ニューテスタメント)用のシナリオ+プレイリポです。非常に長いので何回かに分けてお送りします。
岩手県巖泉町、森に囲まれた自然の美しい街だ。観光に来るにはいいのかも知れないけど。俺には退屈な街。そういう風に16歳の高校生ヤツ・キョウスケはそう思っている。
『どんなところでもすめば都まずは彼女でも作ってみたら?』
とは友人のオカムラの意見だが、『垢抜けない泥つき大根みたいなのを彼女にするなんて』
東京から親の都合でこっちに引っ越してきたばかりのキョウスケはそう考えていた。
東京上野広小路、岩手新報東京支社では今日もマキハラ編集長の怒りが静かに燃えていた・
『ネヤガワー!!確かにテキサスのカウボーイを取材して来いといったがなんだこれは?「テキサスブロンコの魂は不滅!永遠のスピニングトーホールド」これはお前プロレスラーのレポートじゃねか!!』
『編集長、ファンク兄弟はすばらしいカウボーイですよ。そもそも彼らの成功には父ドリーファンクシニアの血と汗と努力がですねぇ…』
ネヤガワは大のプロレス・格闘技マニアである新聞記者になったのも「タダでプロレスが見られる」そう考えたからだった、彼が生きていくためには金などは必要ない。食べるために働くなんていうことは彼には必要ない、ただ、自分に与えられた膨大な時間を楽しく過ごすためにそれが必要なだけだ。
『まったくお前は、変な取材しかしてこないんだから。もういい、お前に海外を任せたのは俺の失敗だ、今週はここにいって来い。岩手の巖泉だ、妙な連続殺人事件が起きてる、変わり者のお前にはちょうどいいだろう』そういって編集長は一枚の写真を見せた、人間の体がなにか得体の知れないものの力で真っ二つに切断されている、グロテスクな写真である。とても人間業とは思えない残忍な殺し方だ。
『なるほど、こいっぁ俺向きですよ…』
タイチは不適に微笑んだ、こう思っている「こりゃぁ、人間の仕業じゃねぇ」
ここまでがハンドアウトの前半です。
後半あと2キャラ分は次々回にでも
だいぶ長編(5〜6回?)になりそうなので、まとめて見たい方はテーマのTRPGシナリオを選んでいくといいかも)