桜の森の満開の下-海賊版-TRPGシナリオ六回目
2005年4月24日 TRPGシナリオweb改革の勢いに乗ってこっちも更新です。このシナリオ掲載を始めてから2回もコンベンションでプレイしいろいろな要素が加わったのでこの中の登場人物たちが経験していないことも多分に含まれています。結末だけは変わらないから許してねみんな。さてぼちぼち始めますか。今回はシゴノセセイラ(PC3)のオープニングフェイズです。
『こういうのも何なんですが、先生は化粧をしたほうがいいと思いますよ。美人なんだから。』
こういったのは2週間前にこの江西病院にやってきた内科医下山大蔵である。36歳という年齢にしては言動が軽い。まるで高校生のような軽薄さである。セイラはこういう男は嫌いである、やはり何事も不言実行というのが美しい。
『化粧している時間があったら30分寝ていたい人なのよ私は』
『なるほど〜でも先生の睡眠不足は僕には何の関係もないですからねぇ。是非30分早く起きて私の目に栄養を与えていただきたいですねぇ、もしかしたらこの近眼も治るかもしれない』
『私にそんな義務はないわよっ!』
『いや、女性は美しくあるべきですよ。花は咲いてこそ花ですよ?』
『私は種かつぼみだとでもいうの?』
『いや〜例えるなら。3月のクリスマスツリーってなところですか?』
『どういう意味よ?』
『押入れの奥でホコリかぶってる。』
『怒るよっ!』
『怒ると美容に悪いですよ?』
『馬鹿馬鹿しい、そろそろ回診の時間だから行くわ』
『そろそろ改心の時間ですか?』
『いちいちうるさいわねっ』
下山の頭をひとつ叩くとセイラは回診に向かった、あの男と話しているとどうも調子が狂う。天敵というヤツだろう。あの男はもしかしたら悪魔ではあるまいか?天使の本性をもつセイラは時々そう思う。だったら好都合だ、悪魔であれば裁きの雷をくれてやればいいだけだ。こんなことを考えるということは自分は相当疲れているのだ。
『正直、うんざりだわね』
自分が一番嫌っているくちぐせが、また一つ出た。
セイラはスズキさんが入院している病室へ向かう、以前より落ち着いているとはいえ、まだ足の傷が癒えていない。幻覚を見るたび病院中を走り回るのだから無理もないだろう。
『赤い目の化け物が、すごい勢いで走ってきてヨシさんを・・・』
いつもの言葉が聞こえてくる、よほど強いショックを受けているのだろう。やはり魔物を見たのではないだろうか?
赤い目、熊のような体。どう考えても魔物である。しかしこんな小さな街を襲ったところでいったいどんな得があるというのか?もし縄張りを荒らしているということであればもっと早くから行動に出るはずだし、攻撃をする対象はこちらより自衛隊のほうだろう。考えても仕方がない、セイラは病室のドアを開ける。
スズキさんは見舞いに来ていた女性に必死に話している。奥さんだろうか?初老の婦人が涙をこらえながら賢明に話をあわせている。
『そうですねぇ、それは大変でしたねぇ。でも大丈夫ですよ。いま警察が調べていますから。』
『警察なんかあいつに殺されちまうよ、あんたも早く逃げなよ』
『あんた?・・・お父さん、私が誰かわからないんですか?』
『あんたが誰なのかはどうでもいい早く逃げなよ、命があぶねぇ!』
『・・・お父さん』
命を失うのはつらいことだが、大事な人間に自分を忘れられてしまうのもそれに匹敵するくらいにつらいことだろう。奥さんはついに顔を覆って泣きはじめてしまった。
なんとかしなければ・・・セイラは強くそう思った。
怪我を治すという守りの対応では間に合わない、こちらから攻めていかなければ。必要であれば「力」を使うことになるだろう。そのためにここにいられなくなったも仕方がない。『人間を守る』その想いが自分をここにとどめているのだから。小さく拳を握り締めたそのとき
『シゴノセ先生っ急患ですっ!』
看護士が自分を呼ぶ声が聞こえた。
『またか・・・』だが、ため息をついている時間はないセイラは声の方向へ走り出していた。(つづく)
『こういうのも何なんですが、先生は化粧をしたほうがいいと思いますよ。美人なんだから。』
こういったのは2週間前にこの江西病院にやってきた内科医下山大蔵である。36歳という年齢にしては言動が軽い。まるで高校生のような軽薄さである。セイラはこういう男は嫌いである、やはり何事も不言実行というのが美しい。
『化粧している時間があったら30分寝ていたい人なのよ私は』
『なるほど〜でも先生の睡眠不足は僕には何の関係もないですからねぇ。是非30分早く起きて私の目に栄養を与えていただきたいですねぇ、もしかしたらこの近眼も治るかもしれない』
『私にそんな義務はないわよっ!』
『いや、女性は美しくあるべきですよ。花は咲いてこそ花ですよ?』
『私は種かつぼみだとでもいうの?』
『いや〜例えるなら。3月のクリスマスツリーってなところですか?』
『どういう意味よ?』
『押入れの奥でホコリかぶってる。』
『怒るよっ!』
『怒ると美容に悪いですよ?』
『馬鹿馬鹿しい、そろそろ回診の時間だから行くわ』
『そろそろ改心の時間ですか?』
『いちいちうるさいわねっ』
下山の頭をひとつ叩くとセイラは回診に向かった、あの男と話しているとどうも調子が狂う。天敵というヤツだろう。あの男はもしかしたら悪魔ではあるまいか?天使の本性をもつセイラは時々そう思う。だったら好都合だ、悪魔であれば裁きの雷をくれてやればいいだけだ。こんなことを考えるということは自分は相当疲れているのだ。
『正直、うんざりだわね』
自分が一番嫌っているくちぐせが、また一つ出た。
セイラはスズキさんが入院している病室へ向かう、以前より落ち着いているとはいえ、まだ足の傷が癒えていない。幻覚を見るたび病院中を走り回るのだから無理もないだろう。
『赤い目の化け物が、すごい勢いで走ってきてヨシさんを・・・』
いつもの言葉が聞こえてくる、よほど強いショックを受けているのだろう。やはり魔物を見たのではないだろうか?
赤い目、熊のような体。どう考えても魔物である。しかしこんな小さな街を襲ったところでいったいどんな得があるというのか?もし縄張りを荒らしているということであればもっと早くから行動に出るはずだし、攻撃をする対象はこちらより自衛隊のほうだろう。考えても仕方がない、セイラは病室のドアを開ける。
スズキさんは見舞いに来ていた女性に必死に話している。奥さんだろうか?初老の婦人が涙をこらえながら賢明に話をあわせている。
『そうですねぇ、それは大変でしたねぇ。でも大丈夫ですよ。いま警察が調べていますから。』
『警察なんかあいつに殺されちまうよ、あんたも早く逃げなよ』
『あんた?・・・お父さん、私が誰かわからないんですか?』
『あんたが誰なのかはどうでもいい早く逃げなよ、命があぶねぇ!』
『・・・お父さん』
命を失うのはつらいことだが、大事な人間に自分を忘れられてしまうのもそれに匹敵するくらいにつらいことだろう。奥さんはついに顔を覆って泣きはじめてしまった。
なんとかしなければ・・・セイラは強くそう思った。
怪我を治すという守りの対応では間に合わない、こちらから攻めていかなければ。必要であれば「力」を使うことになるだろう。そのためにここにいられなくなったも仕方がない。『人間を守る』その想いが自分をここにとどめているのだから。小さく拳を握り締めたそのとき
『シゴノセ先生っ急患ですっ!』
看護士が自分を呼ぶ声が聞こえた。
『またか・・・』だが、ため息をついている時間はないセイラは声の方向へ走り出していた。(つづく)
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