桜の森の満開の下-海賊版-TRPGシナリオ五回目
2005年4月17日 TRPGシナリオ途中で放りだしたのか?と思われがちですがどっこい細々と続いている第五回です。今回はPC4(ネヤガワタイチ)のオープニングフェイズを書きます。PC3(シゴノセセイラ)は一番最後になります。なぜならその方が話しの流れがいいためです。それでは本編。
火曜日…
巌泉についたタイチは、まず街の中を散策してみることにした。半魔としての能力で自分と同じものを探してしまえば話は早いのだろうが、自分は魔物である前に新聞記者である。情報はコネと足で稼ぐのが常套手段だろう。それに魔力を使って相手を探すということは相手に自分の存在を伝えることにもなる。そんな愚行を犯すほど彼は若くはない。
新聞のスクラップと秋葉原で3万円でかったウィンドゥズ98のノートパソコンを抱えタイチは町役場へ向かった。殺された人々の年齢、説別、職業などを洗い出し関連性を見つける。そして『彼らがいなくなったことで誰が得をするのか?』を考える。殺人事件の捜査の基本はシャーロックホームズの時代からさほど変わっていない。もっとも理由なく人が殺せてしまう現代では通用しないことが多いアプローチではあるが。
『理由泣く人が殺せる…人間てのは魔物よりおっかねぇかもしれねぇな』
そう考えることが時々ある。
バラバラと書類をめくっていると殺された6人のプロフィールが明らかになった。
西荻ユウゾウ/47男/代田製薬盛岡営業所勤務
川久保ヨシカツ/35男/三島材木現場監督
小城屋ケンタロウ/61男/作家
君塚サトシ/25男/巌泉小学校教諭
三上タケシ/78男/無職
蜂谷ハジメ/41男/陶芸家
『しかし、まぁ…見事なまでにバラバラだな』
関連事項といえば全員が成人男子であることぐらいだ、あまりにも範囲が広すぎる、ここから先は彼らを実際に知る人物から話を聞くしかなさそうだ。どうせ警察も同じことをやっているだろう。タイチは携帯を取り出し電話をかけた
『おーネヤガワくんか、この間の池袋の一件は世話になったな』
警視庁資料(死霊)科のフジオカ警部である。資料科は特殊な組織で魔物による犯行を独自に調査、時によってはその駆除を行う。そういう特別な部署である。タイチが個人的に協力したことも一度や二度ではない。
『フジオカさん、岩手の猟奇殺人の件ってなにか動いてます?』
『きなくさいとは思ってるんだが、あれは岩手県警の管轄だ。』
『じゃぁ、特に有益な情報は無しですか?』
『無しだな、…今のところは』
『今のところは…ですか?』
『必要があれば俺達が動く、できればやりたくないがね。週末ゴルフなんだよ。最近アイアンの調子がよくてね』
『…仕事しろよ、税金泥棒め。』
『まぁ、ゴルフは本当の理由じゃない。あの街に自衛隊がいるだろ?じつは、あそこが何をしてるかというのは最重要機密とかで俺達も把握してないんだ。』
『最重要機密?核でも持ってるんですかね?』
『核はさすがにないだろうが、もしかすると「俺達みたいなの」には一番ありがたくない奴等のねぐらかも知れんと言う事さ。』
『対魔特殊部隊、ですか?』
『もしそうなら、話は厄介だな。ま、がんばれよ。』
そういって電話は切れた。
『自衛隊か…厄介な話だ。自衛ってんだからこんな山奥じゃなくて海の側にでも居ろってんだ。お前らが戦わなきゃいけないのは海外からの侵略者だろうが。国内は警察と正義の味方に任せときゃいいんだよ』
そう悪態をついていると後ろから不意に声が聞こえた
『あなたもそうお考えですか、この街に自衛隊は不要です。私達が必ず追い出しますから』
振り返ると、60代くらいの紳士。いや紳士というよりは畑のおじさんといった雰囲気の男が真剣なまなざしで立っていた。タイチはこの男を写真で見たことがある。この街の町長北園祐一郎だ。もう15年以上もこの街の長を務め町民からは大きな信頼を得ている。街の名物になっている桜の街道を作ったのも彼だ。最近は自衛隊の立ち退き運動の中心になっているということらしい。それはそうだろう基地も原発も必要かもしれないが「おらが村」にそれがあれば「やっぱりいらない」というのが本音というものだ。
新聞記者として町長といろいろ話を進めると、自衛隊はかなり強引な方法でここに基地を作ったらしく。町民からはまったくいい感情を抱かれていないということがわかった。殺人事件に関してもいくつか質問をしてみたが、有益な回答は得られなかった。
その代わり街一番の物知り喫茶店の「ワタナベマリコ」という人物を紹介してもらった。情報の収集源が確保できただけでもよしとすべきだろう。
『ささやかながら守り続けてきた幸せな生活を、あいつらは踏みにじったんですよ』
町長の懸命な訴えが妙に心に残った。時間ができたら記事にしてみるのも良いかな?そうタイチは思った。
役場を出ると自衛隊の大きなトラックが何台も何台もそれほどを大きくない商店街を走ってきた。黒い煙を上げて…きれいなものを汚しにきた機械の魔物。タイチにはそんな風に見えた。(つづく)
火曜日…
巌泉についたタイチは、まず街の中を散策してみることにした。半魔としての能力で自分と同じものを探してしまえば話は早いのだろうが、自分は魔物である前に新聞記者である。情報はコネと足で稼ぐのが常套手段だろう。それに魔力を使って相手を探すということは相手に自分の存在を伝えることにもなる。そんな愚行を犯すほど彼は若くはない。
新聞のスクラップと秋葉原で3万円でかったウィンドゥズ98のノートパソコンを抱えタイチは町役場へ向かった。殺された人々の年齢、説別、職業などを洗い出し関連性を見つける。そして『彼らがいなくなったことで誰が得をするのか?』を考える。殺人事件の捜査の基本はシャーロックホームズの時代からさほど変わっていない。もっとも理由なく人が殺せてしまう現代では通用しないことが多いアプローチではあるが。
『理由泣く人が殺せる…人間てのは魔物よりおっかねぇかもしれねぇな』
そう考えることが時々ある。
バラバラと書類をめくっていると殺された6人のプロフィールが明らかになった。
西荻ユウゾウ/47男/代田製薬盛岡営業所勤務
川久保ヨシカツ/35男/三島材木現場監督
小城屋ケンタロウ/61男/作家
君塚サトシ/25男/巌泉小学校教諭
三上タケシ/78男/無職
蜂谷ハジメ/41男/陶芸家
『しかし、まぁ…見事なまでにバラバラだな』
関連事項といえば全員が成人男子であることぐらいだ、あまりにも範囲が広すぎる、ここから先は彼らを実際に知る人物から話を聞くしかなさそうだ。どうせ警察も同じことをやっているだろう。タイチは携帯を取り出し電話をかけた
『おーネヤガワくんか、この間の池袋の一件は世話になったな』
警視庁資料(死霊)科のフジオカ警部である。資料科は特殊な組織で魔物による犯行を独自に調査、時によってはその駆除を行う。そういう特別な部署である。タイチが個人的に協力したことも一度や二度ではない。
『フジオカさん、岩手の猟奇殺人の件ってなにか動いてます?』
『きなくさいとは思ってるんだが、あれは岩手県警の管轄だ。』
『じゃぁ、特に有益な情報は無しですか?』
『無しだな、…今のところは』
『今のところは…ですか?』
『必要があれば俺達が動く、できればやりたくないがね。週末ゴルフなんだよ。最近アイアンの調子がよくてね』
『…仕事しろよ、税金泥棒め。』
『まぁ、ゴルフは本当の理由じゃない。あの街に自衛隊がいるだろ?じつは、あそこが何をしてるかというのは最重要機密とかで俺達も把握してないんだ。』
『最重要機密?核でも持ってるんですかね?』
『核はさすがにないだろうが、もしかすると「俺達みたいなの」には一番ありがたくない奴等のねぐらかも知れんと言う事さ。』
『対魔特殊部隊、ですか?』
『もしそうなら、話は厄介だな。ま、がんばれよ。』
そういって電話は切れた。
『自衛隊か…厄介な話だ。自衛ってんだからこんな山奥じゃなくて海の側にでも居ろってんだ。お前らが戦わなきゃいけないのは海外からの侵略者だろうが。国内は警察と正義の味方に任せときゃいいんだよ』
そう悪態をついていると後ろから不意に声が聞こえた
『あなたもそうお考えですか、この街に自衛隊は不要です。私達が必ず追い出しますから』
振り返ると、60代くらいの紳士。いや紳士というよりは畑のおじさんといった雰囲気の男が真剣なまなざしで立っていた。タイチはこの男を写真で見たことがある。この街の町長北園祐一郎だ。もう15年以上もこの街の長を務め町民からは大きな信頼を得ている。街の名物になっている桜の街道を作ったのも彼だ。最近は自衛隊の立ち退き運動の中心になっているということらしい。それはそうだろう基地も原発も必要かもしれないが「おらが村」にそれがあれば「やっぱりいらない」というのが本音というものだ。
新聞記者として町長といろいろ話を進めると、自衛隊はかなり強引な方法でここに基地を作ったらしく。町民からはまったくいい感情を抱かれていないということがわかった。殺人事件に関してもいくつか質問をしてみたが、有益な回答は得られなかった。
その代わり街一番の物知り喫茶店の「ワタナベマリコ」という人物を紹介してもらった。情報の収集源が確保できただけでもよしとすべきだろう。
『ささやかながら守り続けてきた幸せな生活を、あいつらは踏みにじったんですよ』
町長の懸命な訴えが妙に心に残った。時間ができたら記事にしてみるのも良いかな?そうタイチは思った。
役場を出ると自衛隊の大きなトラックが何台も何台もそれほどを大きくない商店街を走ってきた。黒い煙を上げて…きれいなものを汚しにきた機械の魔物。タイチにはそんな風に見えた。(つづく)
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